120421
家の前を通っている道路の両端に溝がある。
溝には蓋の乗っている所とそうではない所があって、時々、ノラ猫が出入りしていた。
ついこの間も、猫が溝の中へ入っていくところを久しぶりに見かけて、「おお猫だ猫だ」と思ったのだけど、
すぐに見えなくなってしまったので、僕は家の中へ入った。
そうして玄関で靴を脱ぎ、溜息を吐きながら階段を上っていると、ふと思い出した。
そういえば子供の頃、溝を駆けていく猫の後ろ姿を見ながら、
この先には広大な地下通路が伸びていて、正しい道順を辿って行けば猫の王国があり、
時々みかけるノラ猫は規則を破って人の街まで冒険に飛び出してきており、あとで親や警官にひどく叱られているのではないか…。
などとありがちな空想をしながら、狭くて暗い溝の奥へ、しばらくずっと目を凝らしていた。
その時間には興奮と高揚感があった。
こんな事がどんどん減っていくうちに、今の自分に辿りついたんだろうと思うと、寂しくなった。

